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生き残り、さらなる発展に必要な資金へのアクセス

2021年4月29日
  • 中小企業を中心に、ペルーの企業は、パンデミックにより甚大な被害を受けた。
  • 投資家に売掛債権をまとめて売却する「ファクタリング」により、小規模企業は必要な資金を確保できた。
  • 世界銀行とIFCは、共同資本市場プログラムJ-CAP)を通じ、ペルーでこのような金融イノベーションが定着するように支援している。 

新型コロナウイルス感染症の拡大により、ペルーは大きな打撃を被った。世界的にみてもペルーの経済減速は激しく、その影響は198990年の経済破綻時を大幅に上回る。活気に溢れていたリマの市場にはシャッターが下ろされ、観光客が街から消え、新型コロナによる死亡率は、一時世界最悪を記録した。

パンデミック以前から既に銀行融資を受けることが難しくなっていた中小企業を中心に、多くの企業は窮状に陥った。パンデミックにより中小企業は収入源を失った。ペルーの貸出金利が通常1820%という状況下で、米や砂糖などの食料品の委託販売を行うインバーシオーネス・ロハス SACInversiones Rojas SAC)を経営するフレディ・ロハスは、5人の従業員の雇用維持に頭を悩ませていた

世界銀行とIFCの専門家は、パンデミック発生より前に共同資本市場プログラム(J-CAP)の下でチームを組み、ペルーの中小企業が現地の資本市場から資金を調達できるような革新的な解決策を探っていた。また、同チームは2015年に新たに制定されたファクタリングに関する法律の導入においてもペルー政府を支援した。「ファクタリング、割引及びファクタリング会社に関する規制」として知られる同法の施行により、小規模企業は、ファクタリングを通じて売掛債権を第三者に割引いて売却することで運転資金を確保し、喫緊の資金ニーズに充てることができるようになった。

IFCは、J-CAPを通し、現地の資産運用会社であるコンパス・グループSAFICompass Group SAFI)の中小企業向けファクタリング・ファンドの事業拡大の支援に乗り出した。このファンドは、ペルーの中小企業が短期的な需要縮小、商品供給や支払いの遅れに対応するために必要な運転資金を低い金利で提供し、ビジネスサイクルの厳しい局面を乗り切れるように支援するものだ。

パンデミックの発生に伴い、J-CAPとコンパスのプログラムは、収益源の途絶えた企業が生き残るために必要な資金を注入する緊急対応策へと姿を変えた。この中小企業の債権ファンドは、ペルー政府による独自支援策と並行して運用されているが、他の多くの国で提供されている支援策と同様に、直面する危機の大きさに対しては不十分であった。

「毎月のインボイスを活用したこの融資で危機を乗り切ることができた。インボイスを資金に変えることができたのだ。」

同プログラムのファクタリング制度を通じ、フレディ・ロハスは、約9万ドル相当の資金を調達できた。金利は平均約3.5%と、ロハスいわく「ペルーでは極めて低い金利」だ。インボイスを使ったファクタリングにより、ロハスは5人の従業員の雇用を守ることができた。「毎月のインボイスを活用したこの融資で危機を乗り切ることができた。インボイスを資金に変えることができたのだ。」

昨年9月、IFCはコンパスが運営するキャッシュ・アドバンス・インベストメント・ファンドに2,100万ドルを出資した。このファンドは、一般的な利率を大幅に下回る金利で、ペルーの中小企業 に対し必要な運転資金を提供する。加えて借入人は、IFCの技術支援プログラムを通じ投資に関する助言も得ることができる。

リマを拠点とするコンパス・グループSAFIのゼネラルマネージャーであるホルヘ・ディアス・エチェベリア氏によると、これまでに約1,900社がこのファンドを通じ運転資金を調達することができた。これらの企業は、自社の売掛債権を売却し、購入した債権者が後にその債権を回収するか、第三者に売却するファクタリングのプロセスを通して資金を調達する。これらの企業の多くは、事業規模が小さすぎて、一般的な銀行融資の対象にはならないが、ファクタリングを通じて資金を迅速に手にすることができ、さらに代金回収にかかる手間と時間を節約できる。ディアス氏によると、未回収の請求金額合計の平均は約3,300ドルに上る。

「重要なことは、中小企業に手頃な費用で流動性を提供することだ。このファンドは、本来パンデミック対応のために組成されたものではないが、これらの企業が危機を乗り切るのにとても役立っている。まるで、パンデミックがこのファンドに明確な需要があるかどうかを試したかのようだ」とディアス氏は語る。

IFCによる同ファクタリング・ファンドへの出資は、過去10年間にわたってペルーの金融市場が着実に成長してきたからこそ実現したものだ。コンパスは2004年頃からチリ及び南米諸国でファクタリングを通じた資金供給の実績があったが、ペルーの資本市場規制が、チリと同等の水準になったことを契機にコンパスは、ファクタリングを通じて少額額面の債権をより多く取り扱うことが可能となり、ペルーで以前よりも大規模に資金供給ができるようになった。

ディアス氏は「この規制改革は、インボイスに法的地位を与え、その価値を大きく上昇させたという点で重要だった」と語る。

こうした規制改革や他の変革を経て、ペルーの資本市場は、取引高もその複雑性も着実に増している。201911月、リマ証券取引所の時価総額は、5年前の約980億ドルから1,430億ドルに拡大した。リマ証券取引所は、2014年に金融サービス企業であるカヴァリ社と統合し、取り扱う金融商品の幅が広がったことでグローバルな投資家の関心を惹きつけられるようになった。カヴァリ社によって導入された改善策の一つが、ファクトラック(Factrack)と呼ばれる電子化されたインボイスの取引システムで、これによりファクタリング市場が拡大した。

世界銀行のファイナンス・エキスパートで、J-CAPプログラムに携わるアナ・フィオレルラ・カルバハルは「ペルーはこうした金融商品を取り扱えるように市場インフラを整備してきた」と語り、IFCがペルーのファクタリング市場に参入するために必要な「成熟した資本市場、洗練された投資家層、そして適切な税制及び規制の枠組みという全ての前提条件を、ペルー市場は満たしている」とカルバハルは続けた。

コンパスへの投資を担当したIFCのシニア・インベストメント・オフィサーのアイビー・フィゲロアは「ペルーでは、金融仲介機関も含め必要な要素が全て揃っている」と語る。地域のファクタリング市場を牽引するコンパスについて「膨大な数の売掛債権を取り纏めることで機関投資家の参入を促し、その中には巨額の資金を擁し、投資資金の分散化を図りたい年金基金もいる」として、その結果この金融商品は「中小企業と機関投資家をつなぐ架け橋、または集約する役割を果たした。中小企業は通常、年金基金の資金にアクセスすることはできないし、年金基金もこのような小規模かつ短期の金融商品に関心がないからだ」と続けた。

新型コロナのパンデミック収束後も、J-CAPは、ペルーにおけるファクタリング市場を通じ、新興国・途上国の雇用と公正な成長の原動力となる中小企業を下支えするという長期的なコミットメントの達成に向け、新たなアプローチに挑み続ける。

 

注記:日本政府は、IFCに設置している包括的日本信託基金(CJTF)を通じ、アルゼンチン、ケニア及びバングラなどの世界各国で共同資本市場プログラム(J-CAP)の展開を支援しています。

2021年4月発行