2019年10月3日、セルビア共和国、ベオグラード—世界銀行グループの一員である国際金融公社(IFC)と多数国間投資保証機関(MIGA)は、ベオグラードにおける画期的な廃棄物処理発電所の建設・運営プロジェクトに向けて、BEO ČISTA ENERGIJA社への2億5,957万ユーロの融資および保証パッケージを提供します。本プロジェクトは、欧州最大の未整備な廃棄物最終処分場を閉鎖し適切な管理を行うと同時に、持続可能な廃棄物管理の為の複合施設の新規建設を通じて、環境汚染の軽減、気候変動を緩和することを目的としています。
ベオグラードの廃棄物発電所建設計画は、官民連携(PPP)スキームによって実施され、ベオグラード郊外のヴィンチャにある飽和状態となった最終廃棄物埋立処分場の閉鎖と廃棄物から出る汚染水及びメタンガスの適正な処理・管理、及び新たにEU基準を満たした衛生的な廃棄物埋立場、廃棄物処理発電所、建設廃材処理施設の建設が含まれます。プロジェクト完成後の発電所では、一般廃棄物や埋立地から出るガスを利用して、再生可能エネルギーとして熱と電気の供給が可能となります。工事期間は最大3年半となる見通しです。
IFCによる融資は最大7,220万ユーロのAローン(自己勘定融資)、オーストリア開発銀行(Oesterreichische Entwicklungsbank (OeEB))から最大3,500万ユーロの並行ローン、最大3,500万ユーロのBローン、さらにカナダIFC混合型気候融資プログラムからの最大2,000万ユーロの譲与的条件による優先ローンを含みます。さらに、欧州復興開発銀行(EBRD)からの最大1億2,820万ユーロの融資を加えた融資パッケージを提供しています。
MIGA による9,730万ユーロの保証は、契約不履行を含む政治リスクに備えるために最大20年間提供されます。この保証は、BEO ČISTA ENERGIJA社の投資による出資総額の90%を保障するものです。
BEO ČISTA ENERGIJA社のマネージング・ディレクターである原田光亮氏は、「本事業でヴィンチャ廃棄物処分場を適切な形で閉鎖し、セルビア最大の環境・社会問題の一つの解決に協力できる事を嬉しく思います。新たに建設される施設では、更に化石燃料に代わり、約3万世帯分の総消費電力、およびコンヤルニク発電所の冬季の発熱量の80%に相当する熱供給を可能にし、温室効果ガス排出削減にも寄与します」と述べています。
本プロジェクトは、2017年の入札を経て、水・環境インフラ世界大手のスエズ社、日本の総合商社である伊藤忠商事株式会社、欧州の投資ファンドであるマルガリータファンドIIが出資して設立した特定目的会社であるBEO ČISTA ENERGIJA社に長期PPP契約として発注されています。IFCのPPPトランザクション・アドバイザリー部門は、2014年以降、ベオグラード市のリードアドバイザーとして、同地域におけるPPPスキームで実施される初の大型環境インフラ事業である本プロジェクトの事業開発及び入札においてアドバイザリーサービスを提供してきました。
IFCの中・東南欧地域マネジャーを務めるThomas Lubeckは、「本プロジェクトは、新興国市場での廃棄物処理発電事業において、初のプロジェクトファイナンスベースで融資可能な民間セクターによる大型プロジェクトとなります。民間セクターの技術力や効率性を活かして、廃棄物処理に関する喫緊の課題を解決するベオグラード市の画期的な本プロジェクトは、持続可能な解決策として他新興国の都市部でも応用する事ができると思います」と述べています。
MIGAインフラ部門のグローバル・ヘッドであるElena Palei氏は、「MIGAによる保証は、この重要なプロジェクトへの長期的な民間セクターからの投資を可能にするために極めて重要な役目を果たしています。我々は、ベオグラード市の債務保証によって、国家による保証なしでも民間投資家が投資しやすい環境を整え、それはセルビア共和国の財政面においてもプラスとなると考えています」と述べています。
IFCは、気候変動を軽減するための民間セクターによる気候対策の推進において、世界規模で主要な役割を果たしています。IFCは2005年以来、再生可能エネルギーによる発電、温暖化防止に貢献する農業関連事業、グリーンボンド、グリーン・ビルディングなど、温暖化防止に貢献する業界に180億ドル以上の長期融資を行ってきました。
MIGAによる気候変動対策プロジェクトへの支援ポートフォリオは、過去6年間に倍増、2019年度は10億1,000万ドルに達し、再生エネルギー、都市におけるモビリティ、グリーン・ビルディングなどに注力しています。
IFCについて
世界銀行グループの一員であるIFC は、新興市場の民間セクターに特化した世界最大の国際開発金融機関です。IFCが持つ資金力や専門知識、影響力を駆使し、世界各地の2,000以上の民間企業との協働を通じて、世界で最も必要とされる地域で市場と機会を創出する支援を行っています。民間セクターの持てる力を活用して途上国の極度の貧困の撲滅と繁栄の共有を促進するべく、2019年度は途上国に約190億ドル以上の長期資金を提供しました。詳細は、www.ifc.orgをご覧ください。
MIGAについて
MIGAは、発展途上国における海外直接投資の推進 を目的に1988年に設立された国際機関であり、世界銀行グループの一員である。クロスボーダーの民間投資の際に、兌換・送金の停止、収用、政府による契約不履行、戦争・内乱といったリスクの保証や民間の投資家や貸し手を対象に信用保証も行っています。設立以来、550億ドルの投資の保証を114カ国で行っています。
カナダIFC混合型気候融資プログラムについて
カナダIFC混合型気候融資プログラムは、世界的な気候変動に対する行動に民間資金を動員することを目的としており、2015年のパリ協定に基づく途上国の低排出発展戦略を支援するカナダのコミットメントを反映するものです。