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研究を実世界でのインパクトに(IFCインパクト投資チャレンジ2024入賞及びフェローシップ参加者 国吉竜太さん)

2024年12月17日
Ryuta Kuniyoshi 国吉さんは、世界中から190人を超える大学院生が集結したIFCインパクト投資チャレンジ(IIC)2024に参加されました。写真:IFC

ケンブリッジ大学を最近卒業された国吉竜太さんは、世界中から190人を超える大学院生が参加したIFCインパクト投資チャレンジ(IIC)2024において入賞されました。

この度、その国吉さんにインタビューをする機会を得て、インパクト投資が気候変動対応や持続可能な開発目標(SDGs)へのIFCの貢献に果たす重要な役割、IFCの気候関連ビジネス部でのフェローシップ(※)への期待、そして仕事を通してどのように持続可能な開発に貢献したいと考えているかについてお話を伺いました。

(※IIC入賞者向けの2カ月間の有給フェローシップ・プログラム)

 

IICでの経験はいかがでしたか?また、IIC2024に参加を決められたきっかけは何でしたか?

(今回、IIC2024のテーマとなった)ジェンダー平等と気候変動対応は差し迫ったグローバルな課題である、という問題意識を以前から持っていました。また、政策金融機関での経験や大学院でのサステナビリティに関する研究を通じ、金融が持続可能な開発において重要な役割を果たすことを学びました。

そこで、IIC2024はインパクト投資について深い知識を得られるとともに、開発金融のパイオニアであるIFCの先進的な取り組みについて学ぶユニークな機会になると思い、参加を決めました。

 

IICでの経験を経て、国吉さんのインパクト投資に対する考え方に何か影響はありましたか?特に気候関連ビジネス分野において、気づきがあれば教えてください。

IIC2024で受けた特別講義やIFCの専門家による助言を通じ、ジェンダーと気候変動の問題が密接に絡み合っていることをより深く理解し、これらの問題に同時に対処することで、より強い相乗効果を生み出せることがわかりました。

これを受け、私たち「CoolidGe」チームは、ガーナの農業セクターにおける食料貯蔵サービスの推進を目指し、生産性のジェンダー格差とフードロスによる温室効果ガス(GHG)排出という二つの課題に直接対処することを試みました。

農業セクターでは女性が労働人口の大部分を占めており、気候変動の緩和・適応には彼女たちの積極的な関与が欠かせません。また、農業に従事する女性の収入を増やしていく上で、フードロスの削減が重要な役割を果たすことがわかっています。IIC2024に参加したことで、一つの課題に注力するのではなく、分野横断的にアプローチしていくことの重要さを痛感しました。

 

IFCの気候関連ビジネス部でのフェローシップでは、どのような学びを得たいですか?

フェローシップでは実務的な知識を深めたいと思っています。気候変動分野は常に進化し続けており、新しい技術が次々と生まれています。そのような中で、IFCがどのようにプロジェクトの実行可能性を見極め、革新的な金融ソリューションを通じてその実現を支援しているのかを学びたいと思います。

また、IFCの気候関連ビジネス部には、事業開発からクライメートファイナンス、さらには世界銀行グループ内でのパリ協定との整合性確保まで、気候変動分野のあらゆる専門家が集まっています。そこで職員の皆さんと交流する中で最先端の知見を得られることを期待しています。

 

Ryuta Kuniyoshi 国吉さんは、世界中から190人を超える大学院生が集結したIFCインパクト投資チャレンジ(IIC)2024に参加されました。写真:IFC

 

気候変動対応や持続可能な開発目標の支援において、インパクト投資は今後どのような役割を果たすと思いますか?

サステナビリティ(持続可能性)は喫緊の課題として、投資家と起業家の両方から大きな注目を集めています。そこで架け橋となるのがインパクト投資だと思います。

インパクト投資は、投資家にとっては各々の関心事項や懸念に対する革新的なアプローチによって投資の成功率を高めることにつながり、起業家からすればより良い条件で資本にアクセスすることができます。

また、気候変動対応は他分野でのサステナビリティ推進とも深く結びついています。IIC2024でも明らかになったように、気候変動対策は直接的にも間接的にもジェンダー平等を前進させるものであり、その逆もまたしかりです。レジリエンス強化もその一例で、気候変動対応と密接に関連しています。

これらの課題を克服していくには、金融とサステナビリティ両面での深い専門的な知見が必要で、自分の知識をさらに深めていきたいと考えています。

 

国吉さんが今後、インパクト投資や気候関連ビジネス分野のキャリアを積まれる際に、今回のIICとフェローシップの経験がどのように活かせると思いますか?

フェローシップ終了後は、日本の政策金融機関である国際協力銀行(JBIC)で働く予定です。現在、JBICは気候変動対応の取り組みを一層強化しています。私自身もエネルギーセクターでのバックグラウンドを活かし、脱炭素化及びエネルギーの効率的な利用の促進に携わっていければと思っています。

エネルギーセクターは世界の温暖化ガス(GHG)排出量で大きな割合を占めていますが、そのアクセス向上が女性のエンパワーメントを推進するという側面も持ち合わせています。しかしながら、エネルギーセクターへの投資には地域間格差がなお残っており、グローバルサウスへの投資も不十分なままです。

IFCで得た知見も応用し、気候変動に対処するとともに、包摂的な成長も推進していくような革新的なインパクト投資のソリューションを考案していきたいと考えています。

 

気候変動やインパクト投資分野におけるキャリアに関心があり、将来IICへの参加を考えている人へのアドバイスはありますか?

インパクト投資に関心のある人にとって、IICはユニークな機会だと思います。IFCの第一線で活躍する専門家から貴重な知見や助言を得ることができるとともに、ファイナリストに選ばれればシニアマネジメント層とネットワークを築く機会も与えられます。また、インパクト投資に強い関心を持つ世界中の大学院生とつながることもできます。相応のコミットメントが求められますが、それと同じくらいに大きな学びや経験があります。ぜひ皆さんにもお勧めしたいです。