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キルギス共和国のビジネス変革を支えるプライベート・エクイティ

2022年4月26日

衣料品メーカーのクール・ブロズ(Cool Bro's)は15年間、隣国向けのカジュアル衣料品を生産してきた。

キルギス共和国を拠点に1,500人の従業員を雇用する同社は、年間2,000万枚に及ぶシャツやズボン、ジャケット、下着などを生産している。

クール・ブロズは、キルギス共和国最大の衣料品メーカーの一つだが、創立者のスイモンコル・ジョルドバエフ氏には、長年温めてきた機関投資家を惹きつけ事業を拡大するという夢がある。

その実現に向け、同氏は、キルギス共和国でプライベート・エクイティ投資を行っているハイランド・キャピタル・ファンドから、昨年末に150万ドルの出資を受け入れた。この関係が同社に資本と専門的な知見をもたらし、商品輸出に必要な認証を取得することができた。

出資に関する合意文書に署名するハイランド・キャピタル・ファンドとクール・ブロズの代表者
写真提供:ハイランド・キャピタル・ファンド

「ハイランド・キャピタル・ファンドは、スマートマネー(先見の明のある投資家)だ」と、ジョルドバエフ氏は語る。「コーポレート・ガバナンス慣行とマネジメント・システムの構築にかかる同社の経験と我々の知識を合わせることで、クール・ブロズは加速度的に発展するだろう。」 

クール・ブロズのような意欲的な企業の存在こそが、IFCが、2018年にハイランド・キャピタル・ファンドに800万ドル投資した理由である。このIFCの投資は、他の投資家が高リスクのために敬遠しがちな新興国市場のプロジェクトに資金提供を行う国際開発協会(IDA)の民間セクター・ウィンドウ(PSW)との共同投資分も含んでいる。

キルギス共和国では、多くの起業家が資本へのアクセスに苦心している中、この出資は、同国の中小企業の成長を促すことを狙いとしていた。

「ハイランド・キャピタル・ファンドは、すでに新たな資金調達先としての地位を確立しており、キルギス共和国の中小企業が資金調達するための市場と機会をさらに創り出す潜在力を秘めている」と、IFCの中央アジア地域担当マネージャーであるカサンドラ・コルバートは語る。 

ハイランド・キャピタル・ファンドは、農業ビジネス、保健医療、教育や通信といったセクターの小規模企業に対し、100万~300万ドルの株式投資を行っている。

キルギス共和国では、こうした資金調達は極めて大きな意味を持つ。同国の中小企業が労働者の60%を雇用し、国内総生産の40%を占める。しかし、同国の金融市場を支配する銀行の多くが、極めて厳格な担保条件を設定しており、起業家が融資を確保することは容易ではない。プライベート・エクイティ・ファンドは、このような資金調達の隙間を埋め、ビジネスの成長と新規市場への参入で起業家に指針を示す存在となる可能性がある。

 

キルギス共和国の服飾産業で働く人々の90%以上を女性が占める。写真提供:ハイランド・キャピタル・ファンド

IFCは新興国市場ファンドに投資する世界最大の投資家の一つで、384のグロース・エクイティ、ベンチャー・キャピタル、シード・ファンドへの投資案件で構成する79億ドルのポートフォリオを運用しており、直接投資及び共同投資の規模も約10億ドルに達する。

ハイランド・キャピタル・ファンドへの支援は、未だ国による経済支配が多い中央アジアの国々において、民間セクターの発展を促すためのIFCのより広範な取組みの一環で行われた。

「ハイランド・キャピタル・ファンドのような現地の新たなファンドマネージャーへの支援を通し、IFCもキルギス共和国、そしてより広く中央アジア地域のプライベート・エクイティ業界の発展を支援している」と、IFCのコルバートは語る。

ハイランド・キャピタル・ファンドは、輸出が2014年以降約200%と飛躍的に伸びている衣料品セクターを主な投資対象としている。同セクターは、キルギス経済の一翼を担うまでに成長しており。2019年時点で縫製業界で働く労働者は、推定20万人と労働人口の8%以上を占めるまでになっている。

しかし、この数字も新型コロナのパンデミックにより、70%以上縮小した。同セクターは、生産の停止や注文の減少、サプライチェーンの問題などにより打撃を受けた。

クール・ブロズも例外ではなかった。

ジョルドバエフ氏は、ハイランド・キャピタル・ファンドの出資により同社が抱えていた資金面の問題が解決したことから、売上増大に集中して取り組むことができたと語る。

「衣料品セクターは、キルギス共和国経済の最重要セクターの一つだ」と、ハイランド・キャピタルのマネージング・パートナーを務めるチョルポンベク・ジュマシュクロフ氏は述べる。「クール・ブロズと連携し、その著しい成長を支援できることを大変うれしく思っている。これは、業界全体の発展にインパクトをもたらすだろう。」

2021年、クール・ブロズの商品は、人体に有害な物質を一切含まない安全な繊維製品の証であり、ヨーロッパへの輸出で極めて重要となる「スタンダード100」の認証を受けた。同社は現在、ヨーロッパでパートナーを探しており、ジョルドバエフ氏は、今後の展開を楽しみにしていると語った。

 

2022年3月発行