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官民連携の水道事業から 拡がる利益

8月 24, 2022

アフリカ各地で、下水管理や脆弱なコミュニティへの給水を手掛ける政府と民間事業者による革新的なパートナーシップ

清潔な水。健康と繁栄の基本的な要件であり、全ての人がアクセスできなければならない。

しかし、世界では約7億7,100万人が、改善された上下水道サービスを利用できずにいる。サブサハラ・アフリカでは、安全な飲料水を入手できるのは人口のわずか半分強に過ぎず、脆弱で農村が多い地域に至っては、その数は4分の1に満たない。

安価な水の安定的な供給は、アフリカの多くの国々で長年の課題となっている。近代的な下水処理場や浄水場などの施設、関連する送配水管網は複雑で、多額の設備投資が必要となるが、大半の国々の財政余力が限られている点が理由として挙げられる。不適切な水インフラは、多くの健康上の問題も引き起こしている。水へのアクセスは容易ではなく、重労働で多くの時間を要する井戸や掘削孔からの水汲み作業の多くは女性や女児が担い、彼女たちの就学や他の仕事の妨げとなるなど大きな負担を強いている。

アフリカの各国政府は、上下水道サービスへのアクセス改善に向け、PPP(Public Private Partnership)と呼ばれる官民パートナーシップへの関心を高めている。PPPは、官民のスキルとリソースを組み合わせたもので、民間投資家が資本とノウハウをもたらし、政府が水利権や土地、他のサービスを提供する。

ルワンダへの民間投資を支援する政府機関のルワンダ開発局(Rwanda Development Board)トランザクション組成部門を率いるデニス・ガテラ氏は「官民パートナーシップは、調達プロセスの透明性の向上、民間セクターの資金や知見へのアクセス、パートナー間でのリスク配分の改善をはじめ、様々な利益をもたらす」と述べる。  

アフリカでは、IFCのPPPトランザクション・アドバイザリー・チームが、ルワンダをはじめとする各国政府と協力し、十分に練られた、高いインパクトをもたらす上下水道プロジェクトを設計し、これを実現するべく、民間パートナーの関心を惹きつけるための取り組みを進めている。

たとえば、ウガンダのブセンバティアでは、700カ所に及ぶ配水場の配管整備で同国政府を支援し、病気や経済の衰退の要因となっていた、掘り起こされた井戸などの汚染された水源への依存を断ち切った。

ブセンバティアで屋台で調理した料理を販売するキャシファ・カイウメシは、この配管整備で水汲みの時間が減り、調理する食品の安全性も確保されたと話す。「売り物である料理に水は欠かせない。」

農業にも水は不可欠だ。モロッコ中央部では、世界初のPPPによる灌漑事業が、地域の景観と経済を一変させた。IFCは、ドリップ灌漑を利用したプロジェクトを組成し、現地に約4,000万ドルの民間投資をもたらした。モロッコの産業グループであるオムニアム・ノード・アフリケイン(Omnium Nord-Africain:ONA)が率いる合弁企業が、期間30年のコンセッション(運営権)を取得し、柑橘農家による取水で帯水層が枯渇し、地下水が減少していたユアーデインの地に水をもたらした。

ユアーデインの農業組合のユーセフ・ジェブハ氏は「農家をはじめ多くの人々が、生計を立てられず、この地を去っていった」と語る。  

PPPが始動してから10年以上が経過した今日、90キロ離れたダムから引いた水で灌漑する1万ヘクタールの土地で、地域の人々は、より多く、そして品質の良い柑橘系果物を育てている。また、灌漑システムによって生産量が年間500万ドルから2,500万ドルへと拡大したのに伴い、ユアーデインの組合従業員数も3倍以上増加し、500人に達している。

急成長を遂げる町

水道システムのもう一つの重要な要素が、下水処理だ。エジプトの衛星都市であるニューカイロでは、水処理施設がコミュニティの廃水や汚水を管理し、処理済みの廃水を農地灌漑用水として供給している。エジプト初のPPP案件である同施設は、民間企業が設計・建設し、運営している。綿密に計画された下水処理プロジェクトにより、処理済みの廃水を農家のみならず、生産業者にも工業用水として提供し、家庭や学校、調理施設向けの飲料水を確保している。

こうしたPPPにより、水関連サービスの提供のみならず、女性を含めた全ての人々に雇用と機会をもたらすことができる。IFCのPPPトランザクション・アドバイザリー業務でアフリカ地域担当マネージャーを務めるマイケル・オパギは、ルワンダでの、競争入札制度を導入したアフリカ最大級のバルク水供給のためのPPP案件の建設現場で、重要な工程を指揮する女性エンジニアに触発されたと話す。

「プロジェクトのスポンサーは、女性の雇用を優先課題に据え、才能あるプロフェッショナルに質の高い雇用を提供することで、PPPの水事業プロジェクトにより、コミュニティを複数の次元で支援できるようにした。」

このキガリのバルク水プロジェクトは、国の水道システムに、1日あたり、オリンピック・サイズのプール16個分に相当する、4万立方メートルの飲料水を供給しており、これにより同市の飲料水の供給量は40%増加した。

バルク地表水供給のためのPPP案件として建設された同施設は、南アフリカを除くサブサハラ・アフリカで初となる競争入札制度が導入された。現在同施設は、2030年までに全ての人々の水へのアクセスを確保するという、ルワンダの目標の達成を支えている。この案件は、バルク水PPP事業が、公共の送配水システムにより多くの水を供給することで、水不足問題に対処できることを示す好事例だと言える。

同プロジェクトは、アブダビを拠点とするメティト・グループ(Metito Group)が、入札により受託した。持続可能性を重視する水管理システムの世界的なプロバイダーである同社は、設計から建設、そして現在ではコンセッション契約のもと、6,100万ドルのプロジェクトを運営している。

一方IFCは、ルワンダ政府に対し、プロジェクトの組成と競争入札の実施において、アドバイザリー支援を行った。

「キガリ・プロジェクトは、アフリカの成長過程にある都市の未来に向けた、より優れた道筋を示している。水だけではない。成長、健康、女性のための機会、そして全ての人々のより良い未来を築くための道筋だ」とオパギは語った。

2022年3月発行