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グリーンビルディングが築くグリーンな未来

2021年8月17日

ブカレストの高速道路沿いに建設された、一見ごく普通の広大な倉庫は、実は世界中で進む重要な取組みの中心地となっている。

シュテファネシュティイ・デ・ ヨォシュ( The Stefanestii de Jos)は、物流不動産会社である WDPが開発・所有する貸倉庫で、ヨーロッパで最も環境に配慮した建築物の一つだ。エネルギーと水の消費量は他の建物に比べて少なくとも 20%減となっており、効率的で持続可能な照明を使い廃棄物削減にも取り組んでいる。ベルギー、オランダ、フランス、ルクセンブルク、ドイツ、そしてルーマニアで事業を展開する WDPのミカエル・ヴァンデン・ハウワ CFOは、この倉庫を「頭脳を持つ倉庫」と呼ぶ。「我々は、グリーンファイナンスを活用し、持続可能な改善のためのイノベーションと対策を打ち出すことで、エネルギー効率に優れた倉庫を顧客に提供している。」

建設業界は、エネルギーに関連した世界の温室効果ガス排出量の 28%を占める。日々の照明や冷暖房のためのエネルギー消費のみならず、建設作業中に発生する二酸化炭素の排出量もその要因の一つとなっている。

グリーンビルディングは、最新の技法と建設技術を用いることで、建設業界に革命を起こすことができる。たとえば、既存の建物も物流・製造チェーンの排出量実質ゼロを実現するため、効果的な役割を果たすことができる。さらに、低炭素経済の成長を促すとともに、 2030年までに再生可能エネルギー・建設の両分野で、 900万件以上の技術職の雇用を創出すると言われている。

グリーンビルディングは、今後 10年間における最大の投資機会の一つでもある。その規模は、 2030年までに新興国市場で 24.7兆ドル、東欧と中央アジアでは 8,810億ドルに上ると予測されている。さらに、環境に配慮した Eコマース向けの物流施設は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるオンライン・ショッピング市場の急成長とその後の貿易の急回復を背景に、パンデミック下で生まれた最も収益性の高いビジネスの一つとなり得る

ルーマニアのブカレスト市にあるシュテファネシュティイ・デ・ヨォシュの環境に配慮した物流倉庫。写真: WDP提供

ルーマニア:グリーン成長の実現に向けた試み

WDPルーマニアのゼネラル・マネージャーであるジェロエン・ビアマンズ氏は、ブカレスト郊外にある倉庫建設に「グリーン成長の実現に向けた試み」があったと語る。同氏は、同国内での資源効率の高い倉庫及び商業施設の建設を担当している。 2020 4月、 IFCは同社のプロジェクトに、約 2 500万ユーロのグリーンファイナンスを提供した。この東欧及び中央アジア地域の不動産分野における IFC初のグリーンファイナンス・パッケージにより、二酸化炭素の排出量を年間 1 2,083トン減らせると期待されている。「この融資パッケージは、質の高い物流インフラを構築し、サプライチェーンの持続可能性を促進することで実体経済を支えるという、我々の使命が認められた証しだ」とビアマンズ氏は語る。

現在、ルーマニアにある WDP 48の物流施設が EDGE認証を受けている。 EDGE Excellence in Design for Greater Efficiencies)は、環境に配慮した住宅や商業施設の世界的な普及を促すための青写真として、 IFCが開発したプログラムだ。

EDGEの恩恵を受け急成長する他の業界としては、情報技術分野があげられる。ルーマニアは、コンピューター技術、ヘルプデスク機能、そして開発者コミュニティの世界的な中心地の一つだ。 IFCは、ブカレストから約 200マイル(約 321キロ)離れたヤシ市中心街の未開発エリアにおける、情報技術とコミュニケーションの環境に配慮した複合施設の建設を支援した。これは、新型コロナの流行により、 Eコマースやリモート・ワークが急増しデジタル・サービスへのニーズが増大していることから、まさに時宜を得たプロジェクトと言える。 

さらに、ルーマニア北東部にあるこの複合施設には複数の企業が入居し、地元の大学を卒業する学生たちにとってもより良い就業機会を提供できる可能性がある。

同施設を建設したユリウス社( Iulius Holdings)の子会社であるパラス・キャンパス( Palas Campus)は、海外の投資家と企業を誘致するため、 7,300万ユーロの融資を受けた。同プロジェクトは、経済成長の推進力となるだけでなく、ヤシ市にある従来のオフィスビルと比べて、エネルギー消費量を 41%削減することが可能で、さらに年間 1,577トンに相当する二酸化炭素排出量の削減にも寄与すると期待されている。

ユリウス社のラルーカ・ムンテアーヌ事業開発担当マネージャーは「パラス・キャンパスは、域内の経済成長のために重要 なプロジェクトであり、 IFCとの連携により、人々を中心に据えながら、企業がどのように成長できるかという点において新たな視点をもたらすことができた」と語る。

さらに、 IFCは、グローバルワース・リアルエステート・インベストメンツ( Globalworth Real Estate Investments Ltd)が発行した債券を購入し、ルーマニアでのグリーン認証を受けた商業ビルの開発も支援した。この資金でブカレストに建設されたルノー傘下のダチア( Dacia)の社屋兼研究開発センターは、同国で初めてブリーム( BREEAM)エクセレントと EDGEという 2つのグリーン認証を取得した象徴的な施設であり、グローバルワースが保有する資産の約 81%がグリーン認証を受けている。

ルーマニア・ブカレストに建設された、ルノー傘下のダチアの環境に配慮した社屋兼研究開発センター。写真:グローバルワース・リアルエステートインベストメンツ提供

生活水準の向上を目指して

これまで IFCは、ヨーロッパ及び中央アジア域内の他の地域にて、多様な環境に配慮した住宅プロジェクトを支援してきた。ウクライナでは、政府の「エネルギー効率化ファンド( Energy Efficiency Fund)」とパートナーシップを組み、エネルギー効率化に向けた住宅の改築で所有者団体と協力した。このプログラムは 670を超える居住用建物を対象としており、同ファンドは、各種投資を支援するため最大で 1 7,100万ドルの調達をサポートし、 6 5,000超の世帯がエネルギー効率化に向けて住宅の改築に着手することができる見込みだ。

同地域では、以前に省エネ建築を促す取組みの一環として、トビリシ市の低中所得者向けの居住施設建設に資金を提供、 2018年末までに約 2,000棟に及ぶ省エネアパートが建設された。

また、 IFCは、トビリシ市を拠点とするプロクレジット・バンク・ジョージア( ProCredit Bank Georgia)―本社が既に EDGE認証を取得―に対し、建築物の省エネ化と EDGE認証の取得を促すインセンティブを提供できるよう助言も行った。

キルギス共和国では、低所得者を対象としたエネルギー効率の向上と住宅環境の改善に向けて金融機関を支援し、 10 3,000トンの石炭消費の減少を実現した。

EDGE認証を取得したトビリシ市にあるプロクレジット・バンク・ジョージア本社。写真:プロクレジット・バンク・ジョージア提供

明日を切り開く

2050 年までに、都市部で暮らす人々の割合は世界の人口の 68 %に達すると言われている。こうした中、グリーンビルディングは、現代の最も深刻な課題の一つである気候変動対策に対する実行可能かつ効果的な解決策の一つとして注目を集めている。 IFC はこれまで、世界のグリーンビルディングに 49 億ユーロ以上を投融資し、 EDGE 基準を推進することで、二酸化炭素の排出量を全世界で 41 万トン以上削減した。

2017年、新規建築物と改修に 5兆ドルが費やされたが、このうちグリーンビルディングへのグローバル投資額は 4,230億ドルとなっている。つまり、域内でグリーン認証を取得した建築物は、全ての建築物の賃貸可能な総面積のまだ 1%未満に 過ぎないということを意味しており、極めて大きな成長の可能性を秘めている。

こうした可能性を持つグリーンビルディングは、ヨーロッパ及び中央アジアの不動産セクターに大きな変革をもたらし、強靭かつ包摂的な成長の実現に着実に貢献しつつある。

2021年7月 発行