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文:アリソン・バックホルツ、ケン・オルー

ナイロビ— 2012年、アイシャ・パンドール氏は、幼児を育てる多くの母親と同様に、ストレスを感じていた。職場と家庭での仕事に追われ、彼女には何か他のことをする時間的な余裕はほとんどなかったのだ。彼女は、南アフリカのケープタウンにある自宅の家事をこなすのにフルタイムのヘルパーは必要なかったが、信頼できて、仕事のよくできるパートタイムのヘルパーを見つけて雇う方法がわからなかった。

彼女はその当時を思い出し、「誰か見つけるのに悪戦苦闘した」と振り返る。「とても長い時間がかかり、じれったかった。」

人事を専門とする経営コンサルタントとして働くパンドール氏は、多くの人々が仕事を必要としていることを知っていた。特に南アフリカでは、家を掃除したり他の在宅サービスを提供したりする女性が家族の唯一の稼ぎ手であることがよくある。テクノロジーを使って仲介する方法について検討を重ね、ついに彼女は会社を辞めて、オンラインで利用者とサービス提供者を結び、家の清掃サービスの予約、管理から支払いまでできるアフリカ初のインターネットベース・プラットフォームであるSweepSouthを設立した。現在、同社は、南アフリカで最も急成長している技術系スタートアップ企業の一つで、ケニアにも進出している。

しかし、その道は彼女が想像していたよりもずっと困難なものだった。数少ない黒人女性の技術系スタートアップ企業CEOの一人で、メンターを見つけるのは困難を極めた。さらに、当時はIT人材が不足しており、現地での資金調達手段も限られ、さらに外部の投資家もアフリカの技術的な潜在力をよく理解していなかった。

アイシャ・パンドール氏は、南アフリカで急成長する技術系スタートアップ企業の一つであるSweepSouthを設立。
アイシャ・パンドール氏は、南アフリカで急成長する技術系スタートアップ企業の一つであるSweepSouthを設立。写真:チャーリー・シューメーカー/IFC

IFCが制作したアフリカのIT起業家達が語るビデオ対話シリーズ、「Africa Talks Tech」で紹介されているパンドール氏の経験は、多くのアフリカのスタートアップ企業が直面するハードルを象徴している。ビデオ対話は、今日発表されたGoogleとIFCの共同報告書「e-Conomy Africa2020」と同時にリリースされた。同報告書は、アフリカのインターネット経済への潜在的な投資機会の概要とともに、アフリカのデジタル変革をサポートするために公的および民間セクターの協調の必要性について明らかにしている。同報告書は、アフリカのインターネット経済は2025年までにアフリカ大陸全体の国内総生産(GDP)の5.2%に達する可能性があり、経済貢献の規模は約1,800億ドルに達すると試算する。

続く経済成長と投資機会

「e-Conomy Africa 2020」と題する報告書によれば、新型コロナによる景気後退にも関わらず、アフリカ全体のデジタル投資機会は深く、広範に及ぶとしている。

今後5年間で、新型コロナにより、アフリカだけでなく、世界の他の地域の経済成長も減速すると予想される。しかし、アフリカのインターネット経済のレジリエンス(強靭な回復力)は、個人消費、優秀な開発者の人材プール、公的および民間投資、デジタル・インフラへの投資、新しい政策や規制と相まって、成長を牽引し続けると予想する。同報告書によると、増加するネット企業が、雇用の創出や貧困の削減、さらにアフリカの将来的な開発課題の克服に貢献する大幅な経済成長への道を切り開くとしている。

同報告書はまた、アフリカのデジタル・スタートアップ企業への投資への関心が2019年に高まり、20億2,000万ドルに及ぶ株式による資金調達につながったと指摘する。 2020年の第1四半期には、さらに3億5,000万ドルの資金を調達している。パンデミックによる世界的な景気後退により、投資家は一時的にリスクを回避する傾向にあったが、投資件数が再び勢いを取り戻す兆候が見られると同報告書は指摘する。

地域の調和と少ない規制変更は、スタートアップ企業の成功の鍵となる。アフリカ大陸自由貿易経済圏(AfCFTA)の協定は、この調和に向けた一つの重要な試金石である。 AfCFTAは、全物品の9割の関税を引き下げ、物品、サービス、資本、及び人の自由な移動を促進することを目的としており、 13億人の市場と2. 6兆ドルのGDPを統合できる可能性を秘めている。同協定は、1月1日から約6週間で物品やサービスの貿易に導入される予定である。

オビ・オゾー氏は、2016年にコボ360(Kobo360)を共同で設立。
オビ・オゾー氏は、2016年にコボ360(Kobo360)を共同で設立。写真:ドミニク・チャベズ/ IFC

それは、まさにオビ・オゾー氏が計画していたことだった。アフリカのトラック運転手と貨物所有者をつなぐ、テクノロジーを駆使したロジスティクス・プラットフォームであるコボ360の創設者は、アフリカ大陸でのデジタル・サプライチェーンの開発に焦点を当てている。一度自由貿易圏が出来れば、「ロジスティクスの観点から見れば、我々が挑む単一のロジスティクス市場は約3,000億ドル規模に上る」と彼は語る。 「課題は、真に汎アフリカ的であること、そして世界の他の地域に提供できる何かを備えた企業となることだ。それが、我々が目指す次の段階だ。」

技術系人材を活かす

これらの目標を達成するには、アフリカの起業家は大陸の「人材市場」を活用できるようになる必要がある、とエチオピア企業GebeyaのCEO兼共同創設者であるアマドゥ・ダッフェ氏は言う。同社は、最も信頼できる人材ソースとなって、アフリカの競争力を示すような会社を目指している。

同報告書にれば、アフリカの技術系人材はピークに達しており、今後も増え続ける。アフリカには70万人近くのプロの開発者がおり、50%以上が、エジプト、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、南アフリカの5つの主要なアフリカ市場に集中している。アフリカの開発者人口において女性が占める割合は全体の5分の1だが、エコシステムの成長は、特にエジプト、モロッコ、南アフリカで女性コーダーに機会をもたらし始めている。

また、同報告書は、人口統計と急速な都市化が示すアフリカの全体的な経済成長とインターネット経済の方向性を明らかにしている。2050年までに、アフリカの人口は約25億人まで増加し、世界の若者(15〜35歳)の3分の1を構成すると予想される。

「Africa Talks Tech」で語るTwigaの共同創設者兼CEOのピーター・エンジョンジョ氏。
「Africa Talks Tech」で語るTwigaの共同創設者兼CEOのピーター・エンジョンジョ氏。写真:ドミニク・チャベズ/IFC

「アフリカが世界規模で競争する場合、その競争上の優位性は、若者に支えられた人口構成にある」と、同報告書の執筆者の1人で、IFCの破壊的技術及びベンチャー・キャピタル投資部門のグローバルヘッド代理を務めるウエール・アエニは語る。 「これらの若いデジタル世代のアフリカの起業家は、テクノロジーを使って、会社を作り、規模を拡大し、価値を創造し、新しい興味深い方法で収益化できることを理解している。これにより、話が変わる。これはアフリカにとって転換点になる可能性がある。」

同報告書は、インターネットの普及がアフリカの全体的な経済拡大のもう一つの重要な要因となると指摘する。今日のインターネット普及率は40%であるが、モバイル・インターネット普及率が10%増加すると、1人あたりのGDPが世界的に2%増加するのに対し、アフリカでは2.5%増加する可能性がある。インターネットの普及率が75%になると、4,400万人の新しい雇用創出の可能性がある。

アフリカ人の雇用創出に加えて、スタートアップ企業の創設者の多くは、彼らの会社がアフリカ大陸特有の企業文化をモデル化していると信じている。 「[大陸の]全体的なテクノロジー・エコシステムが非常に小さいため、ごく少数の企業が方向性や文化を決めている」とアイシャ・パンドール氏は語る。 「アフリカの企業は[他の企業]より責任があるように感じる…私たちは、人の扱い方にも特定の方法が必要となる。たとえば、私たちは価値観にもっと注意を払う必要があるし、エコシステムがもっと発達しているところとは、違う行動を取る必要がある。」

MaxABのカイロオフィスで談笑する、同社共同創設者兼CEOであるベラレル・メガーベル氏(中央)。
MaxABのカイロオフィスで談笑する、同社共同創設者兼CEOであるベラレル・メガーベル氏(中央)。写真:ヘバ・カミス/ IFCのNOOR

同様に、収益よりももっと大きなものに取り組むエジプト企業MaxABの共同創設者兼CEOであるベラレル・メガーベル氏は語る。 「我々の成功は、大陸のおかげだ。」

バックホルツはワシントンD.C.より、オルーはナイロビより取材を行った。

2020年11月発行