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ジア・ウル・レーマン

セルセラ・ニーハンにとって、母国への帰国は、新たなスタートを切り、夢を実現するチャンスだった。

12年に及ぶ難民生活の後、22歳で母国アフガニスタンに帰国したニーハンは、起業という夢を追い求めた。しかし、ビジネスセクターで活躍する女性は事実上ほぼ皆無であること、そして、首都カブールの活気あふれる市場で服を売り、店を経営しているのは男性のみであるという現実にショックを受けた。彼女は、特別な取組みが必要だと考えた。

「衣料品事業を立ち上げることで女性が活躍する場を提供し、女性が安心して自立できるよう縫製のワークショップを開きたかった」とニーハンは語る。

「しかし、周りの女性は、事業を興すという私の計画にいつも否定的だった。私のアイデアについても比較的冷めた反応で、むしろ治安の問題や女性に対する文化的な障壁を指摘して私を萎縮させたこともあった。さらに、私は経験も不充分で、融資を受けることも難しかった。しかし、こうした挑戦をあえて受けようと決心した。」

まず伯母からの支援を元手に、ニーハンは2019年に事業登録を行った。カブールに店を借り、必要な資材を購入して、衣料品店である「ゼブ・ブティック(Zeb Boutique)」を開業した。ゼブ・ブティックでは女性を雇用し、主に婦人服を作っている。

セルセラ・ニーハン氏。自身の店、ゼブ・ブティックにて撮影。
セルセラ・ニーハン氏。自身の店、ゼブ・ブティックにて撮影。写真提供:アフガニスタン・ファースト・ マイクロファイナンス・バンク

アフガニスタンの治安を考えれば、これは容易な決断ではなかった。現地の文化や規範は往々にして女性経営者への支援に消極的だ。加えて、女性の移動の制限は、依然として存在している。

「まず貸店舗を見つけることが容易ではなく、また営業許可が下りるまで2年かかった。さらに、女性の縫製職人を見つけることができず、男性の職人を雇わざるを得なかった。その一方で私は、女性の縫製職人を雇用することがいかに重要であるかを思い知った」とニーハンは続けた。

「男性が支配的な社会において、女性は、社会規範に加え家族からの圧力もあり夕方5時以降働くことができない。しかし、私の店では彼女たちの勤務時間は7時までとした。彼女たちの自立を支援したかった。」

ニーハンは野心的な計画を立てていたものの、既に開業資金を伯母から借りており、事業拡大に必要な資金を調達することができなかった。その後、新型コロナウイルス感染症が事業に影響を及ぼし始めた。ニーハンは、新型コロナによる影響への対策と立ち上げたばかりの店を守るために、より長期的な金融支援を必要としていた。

「多くの地元の銀行に問い合わせたが、事業を立ち上げて間もないことから融資返済が可能か見極められないとして、融資を断られた」とニーハンは当時を振り返る。「ある日、フェイスブックでアフガニスタン・ファースト・ マイクロファイナンス・バンク(First MicroFinance Bank of Afghanistan:FMFB-A)の記事を読み、即座に融資を申し込んだ。その結果、幸運なことに50万アフガニの融資を受けることができた。これは、機材をさらに購入し新型コロナを乗り切るのに十分な額だった。」

FMFB-Aは、ニーハンはじめ才能溢れる多くのアフガニスタンの女性に融資を行っている。ニーハンは、この融資によりビジネスで成功を収めることができた。現在、彼女のゼブ・ブティックの知名度は高まり、ソーシャルメディアのフォロワー数は7,000を超えている。

社会的使命を担う銀行としてFMFB-Aの顧客の24%がアフガニスタンの女性だ。FMFB-Aは、国内の平和と安定の定着に伴い、さらに女性の顧客を増やしたいと考えている。

アフガニスタン・ファースト・ マイクロファイナンス・バンクのオマユーン・ニクセヤ事業開発・マーケティング担当責任者は「女性のビジネス環境の整備が進まない背景には、女性を取り巻く現状やニーズについての認識と、女性のための的を絞ったマーケティング・キャンペーンが不足していることがある」と述べる。「融資と銀行サービスを必要としている女性にこれを優先的に提供することで、女性のみならずその家族の生活をも変えることができると確信している。」

IFCが出資しアガ・カーン・マイクロファイナンス機関(Aga Khan Agency for Microfinance)、ドイツ復興金融公社(Kreditanstalt für Wiederaufbau)及び 米国アガ・カーン財団(Aga Khan Foundation USA )の支援を受け2004年に設立されたFMFB-Aは、主に、中小企業を含めた企業への支援と融資、そして住宅金融や医療費の貸付を行っている。現在、FMFB-Aは、カブールやマザーリシャリーフ、シェベルガーン、クンドゥーズ、バダフシャーン、バーミヤーン、そしてヘラートといった同国な主要な地域を網羅する14州・80郡で、38支店を展開している。

IFCのアフガニスタン担当シニア・カントリー・オフィサーであるワグマ・モーマンドは「初期段階でのIFCによる100万ドルの株式投資に加え、他の投資家の支援により、FMFB-Aの純資産は現在、1億5,400万ドルに達している」として、さらに「IFCの初期投資と共に包括的な助言サポートも行われ、貧困国や脆弱国及び紛争影響国(IDA・FCS諸国)における成功例となった」と続けた。

他の多くの国と同様に、新型コロナはアフガニスタンで、市民や企業に大きな犠牲を強いている。ロックダウン(都市封鎖)、時短営業、国境閉鎖などあらゆる関連措置が、売上や雇用に負の影響をもたらしている。

新型コロナによるアフガニスタンの企業への影響に関するIFCの調査では、実に企業の88%が売上の大幅な減少を経験していることが明らかになった。企業の37%が従業員の解雇に踏み切ったことで、既に高かった失業率と貧困率が一段と悪化した。

アフガニスタンの民間セクターが、新型コロナによる売上への影響によって困難に直面していた時も、FMFB-Aはレジリエンス(耐性)を示し、厳しい時期でもポートフォリオを維持することができた。FMFB-Aは過去に経済危機・政治危機を経験していたことから、ポートフォリオの運用管理に精通しており、現在、高リスク分野への融資を削減し、回復に重点的に取り組んでいる。

FMFB-Aの貸出先件数は5万3,000件を超え、預金者の数は19万3,000人に及ぶ。IFCの助言サービスを受け、2015年に初の事業計画を作成した。2019年に同計画は更新され、より多くの投資を誘引するとともに、女性をターゲットとした融資や、エネルギー効率が高く耐震性に優れた住宅向けの融資、再生可能エネルギーの利用を促進する融資などを含めたポートフォリオの拡充を目指している。

これとは別の取組みとして、IFCはアフガニスタン・ガザンファル銀行と連携し、同国の女性の金融・非金融サービスの利用拡大を目指したプログラムを最近立ち上げた。同プロジェクトは、今後5年間で5,000人を超えるアフガニスタンの女性に直接便益をもたらすと期待されている。

こうしたプロジェクトの成功が、夢を追い続けるニーハンのような起業家を支え、後に続く者たちの模範となる。

「現在は、雇い入れるために女性たちに専門的な訓練を提供しながら、彼女たちが自ら事業を立ち上げることができるよう支援している」とニーハンは語る。「私が同志である女性たちに伝えたいことは、我々は強くならなくてはならず、独自のビジネスのアイデアを持つ必要があるということだ。他と違うことをすれば、彼女たちが成功する可能性が生まれる。」

2021年1月発行