新型コロナ危機下でビジネス・コミュニティが人命を救う

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新型コロナ危機下で
ビジネス・コミュニティが人命を救う

オデッサの危機対応センターでは5百万ドル近くの資金を地元企業から動員し、病院には重要な機器を、医師には特別防護服を提供した。 © TIS Group of Terminals

アンドレイ・スタヴニツァー氏にとって、新型コロナウイルス感染症に立ち向かうことは、何を優先するかを決断する壮絶な戦いだ。彼がウクライナの都市オデッサに設立したパンデミックの危機対応センターのソーシャル・メディアのサイトには、医師とスーパーヒーローたちが肩を並べるイラストが描かれ、医療提供者は現代社会で英雄視されていることが伺える。

スタヴニツァー氏は科学者でも、医師でもない。ウクライナにあるIFCの顧客企業、MVカーゴの共同所有者であり、カーギルとMVカーゴの共同プロジェクトであるネプチューン穀物ターミナルの共同所有者だ。ターミナルは、ウクライナ南部ユージヌイ港に位置する。スタヴニツァー氏の取り組みによって、オデッサの新型コロナ危機対応センターでは、検査機器の購入とウクライナ全土の保健医療専門家を支援する資金として1億3,595万ウクライナ・フリヴニャ(約5百万ドル)を動員した。

ウクライナとウクライナの民間企業を健全な状態に維持しなければならないという強い信念のもと、スタヴニツァー氏は、世界的なパンデミックの勢いが増す3月中旬に200を超えるオデッサの企業トップを集め、地元の病院への医療機器や個人防護具の提供、一般家庭への食料や備品の支給、さらには高齢者の移動手段の手配やケアに乗り出した。この時、彼がビジネス界で学んだスキルが大いに役立った。資金集め、運営、調達などのプロセスについて彼は、「インフラ・プロジェクトの開発とまさに同じだ」と話し、また、「民間企業ならではのスピードで迅速に動くことが必要だった」と語る。

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地域の行政機関や市議会は危機対応センターを早い段階から支援した。オデッサは人気のある観光地で、ウクライナの都市では三番目に人口が多く、その人口密度の高さゆえにパンデミックに対しての脆弱さが露呈した。

危機対応センターは、調達した資金に加え、高度医療機器や防護服等の必要性の高い物品を購入して病院や救急隊員、社会福祉機関、家庭医療センター、研究所に届けた。これらの寄付には、防護服48,000着、呼吸補助機231,100台、パルスオキシメータ(酸素飽和度測定機器)200個、42台の人工呼吸器、32台の酸素濃縮器などが含まれる。

同センターではまた、地域の病院の医師への食事や宿泊・移動手段の無償提供も行っている。アメリカ、イスラエル、イタリアの医師たちが地元の医師たちと専門知識や訓練方法を共有できるよう、これらの国の大使と共同でワークショップも開催した。

予期せぬニーズに対応する

パンデミックに伴うニーズはスタヴニツァー氏や彼の仲間の想像の域を遙かに超えるものだった。「最初に皆で集まった時は、誰も何も判っていなかった」と振り返る。それでも、最初から「全員がこの戦いに持てる力の全てをつぎ込んだ。資金、従業員、コミュニケーション、リソース、能力、製品、そして困難な状況においても交渉し解決策を見いだす能力に至るまでの全てだ。」

危機対応センターの支援によりオデッサ地域の多数の病院へ人工呼吸器やバイタル・サインモニターが届けられた。 © TIS Group of Terminals

需要が拡大するにつれ、危機対応センターの活動も広がった。ボランティアたちは数カ月にわたり24時間体勢で対応しなければならなかったが、皆使命を果たすために献身的に働いた。スタヴニツァー氏は言う。「誰一人として、疲れたとか週末は休みたいなどと言う者はいなかった。人々が恐怖を感じている中、こうした活動に関与できることに誰もが大きな喜びを感じていた。人は恐怖を感じると、何かしたくなるものだ。解決へ向け、何かに参加しなければと思うのだ。」

ウクライナの社会活動が徐々に再開するにつれ、危機対応センターは地域の保健医療機関と提携しながらリソースの共有化を図り、危機対応センターに協力する一部の企業は引き続き住民のニーズに応えていく予定だ。その他の企業も、将来の危機対応に役立てるため、彼らが学んだ教訓を保健省はじめ地域の保健機関や他の組織と共有していくつもりだ。

スタヴニツァー氏は、このような情報を利用しやすくすることで、今後起こりうる公衆衛生危機に対するウクライナの対応を強化できると考える。彼はここ数ヶ月の状況を振り返り、ビジネス界が一体となって地域社会の利益のために貢献できることを危機対応センターの取り組みが証明したと確信している。

新型コロナウイルス感染拡大の第一波からオデッサの人々を守る手助けをすることは「私にとって大変名誉なことだ」と語るスタヴニツァー氏。「もう一度やるかと誰かにきかれたら、おそらくやると答えるだろう。なぜなら、今回、我々は力を合わせ適切なタイミングで適切な行動をしたと思うからだ。そして今、我々は以前より次の危機への備えができている。」

2020年9月発行