寄稿記事

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日本経済新聞朝刊17面 2019年10月23日 私見卓見

『インパクト投資、共通基準で』

フィリップ・ル・ウェルー氏 国際金融公社(IFC)長官

 

日本の投資家は環境などへのネガティブな影響を避けるだけでなく、貧困や社会的包摂、保健、気候変動といった持続可能な開発目標(SDGs)の中心的な課題に貢献したいと考え始めているようにみえる。「インパクト投資」と呼ばれ、経済的リターンを追求するとともに、社会や地球環境にプラスの影響をもたらすことを意図して実行するものだ。
 

市場における透明性や規律、信頼性を高めるため、国際金融公社(IFC)と54の民間企業を含む76の機関投資家は今年、「インパクト投資の運用原則」と呼ばれる共通基準に署名した。インパクト投資の運用原則は経済的リターンだけでなく、投資によって意図した効果が出ているかを精査し、モニタリングすることを署名機関に求めている。

最近、日本で初めて、国際協力機構(JICA)が署名した。アジアでも最初の署名機関の一つとなった。さらに世界で40の機関投資家も署名を検討しており、インパクト投資の運用原則の広がりを期待する。

投資家は、共通基準がもたらす規律と透明性を望んでいる。16年前にIFCが国際金融機関とともに策定した「赤道原則」は、途上国でのプロジェクトファイナンスのベンチマークとなった。2014年に「グリーンボンド原則」が導入されると、グリーンボンドの市場規模は13年の100億ドル(約1兆800億円)から18年の1710億ドルに拡大した。19年は2500億ドル規模が見込まれている。

同様に、インパクト投資の運用原則も市場の拡大に寄与するはずだ。IFCは最近のリポートで、現在世界で約1兆ドルと推定されるインパクト投資市場の潜在的な規模は、26兆ドルと試算している。大規模な資金が、インパクト投資で運用されるのを想像してみてほしい。1年間に数兆ドルが必要なSDGsの達成に向けて大きく前進することができるだろう。

共通基準とグローバルなプレーヤーのコミットメント(関与)により、インパクト投資は貧困と戦い地球を救う解決策として、市場経済の力をいかす有力な方法となる。投資家は、社会的インパクトか経済的リターンかで迷う必要はなく、両方を追い求められる。

 

日本経済新聞 20191023日付に寄稿
この記事は、日本経済新聞社の承諾を得て転載しています