ケーススタディ:日本企業による途上国ビジネスへの支援 ベトナム: セメント事業 (太平洋セメント、三菱マテリアル)

セメント製造業 投融資の概要

プロジェクト概要

事業主体

ギソンセメント社

所在地

ベトナム社会主義共和国
タインホアギソン地区

調印年月

1998年8月

スポンサー
太平洋セメント(1)
三菱マテリアル
ベトナムセメント公社

参加公的機関
ADB(2)
JBIC(旧日本輸出入銀行)

IFCは1998年8月、 太平洋セメントと三菱マテリアルが出資する日越合弁会社、ギソンセメント社との間で、総額3,000万ドルの融資(Aローン)契約、および2,650万ドルを上限とする協調融資(Bローン)契約(3)に調印しました。

本プロジェクトは、経済成長によりセメントの需給がひっ迫するベトナムの状況を受けて行われたものです。日本企業によるベトナム向け投資としては、当時最大規模の案件でした。

太平洋セメントと三菱マテリアルは、成熟期にある日本のマーケットから海外事業への進出・展開を図っており、本プロジェクトは重要なプロジェクトとなりました。

投融資の背景

アジアのセメント産業へのファイナンスについて高い実績を持つIFCは、初期段階から中心的な役割を果たしました。

  • 合弁のファイナンス・ストラクチャーに関する助言を提供
  • スポンサーの状況に合わせて、劣後債を利用した革新的なファイナンス計画を提案

国際機関であるIFCが仲介することにより、政府、スポンサー企業、合弁パートナーが安心して案件を進めることができました。

IFCによる開発効果

経済への影響

  • 信頼できる高品質の製品の提供により、市場を健全化
  • 関連する中小企業へのトリクルダウン効果

社会への影響

  • インフラ整備に必要なセメントの安定供給
  • 貧困地域での事業立ち上げによる雇用創出、従業員のスキルアップ
  • ベトナム政府の税収増

環境への影響

  • エネルギー効率が高く、環境負荷が低い、世界基準のモデル工場としてのデモンストレーション効果

ギソンセメント社の地域への貢献

ハノイ市から南へ約220キロのギソン地区では、農業が主な産業でしたが、農耕に適さない土壌のため、人々の生活は非常に貧しいものでした。

当時インフラがほとんど未整備だったギソン地区は、急速に発展を遂げるハノイに対して、都市部の恩恵を受けにくい遠隔地でした。

一方、石灰岩が豊富で、海に面したギソンは、セメント事業に好ましい立地にあります。ベトナム政府も、貧困地域であるギソン地区の工業化に積極的でした。

ギソンセメント社がインフラ整備を行ったことで、安定した電気の供給や都市へのアクセスが可能になり、地域住民の生活水準、利便性は大幅に向上しました

また同社は、従業員子息向けの幼稚園の新設、地元の工業専門学校等への奨学金制度の設置など、さまざまな地域コミュニティへの貢献を行っています。

注:
1. 当時の日本セメント。太平洋セメントは秩父小野田との合併(1998年)により設立。セメント業界最大手
2. ADBとIFCがファイナンスを担当。ADBも同額の自己勘定融資、協調融資を供与
3. 太平洋セメントと三菱マテリアルの出資比率はエヌエムセメント(日本側投資会社)を通じた間接保有持分