国際金融公社(IFC)  日本人職員の貢献

日本人職員の貢献 (増岡俊哉)

増岡 俊哉 / Toshiya Masuoka
IFC 開発インパクト担当局長 
(ワシントンDC本部勤務)

 

1982年 早稲田大学政治経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)入行
1987年 米国ウォートンスクール修了(MBA)
2003年 米国イェール大学経営大学院に留学(MBA)
2004年 IFC経営戦略局長
2008年 コーポレート・アドバイス(技術・経営支援)局長
2010年 インクルーシブ・ビジネス・モデル局創設
IFCのインクルーシブ・ビジネスを通じて途上国を支援

「私達には宇宙開発が出来るほどの科学技術と資金が有りながら、地上における貧困、紛争等様々な問題は未解決のままです。」月面のアームストロング船長からカメラは途上国のスラムへ。40年程前のあるテレビ番組の一シーンです。当時小学生だった私と開発問題との出会いでした。人に優しい技術を使った途上国の自立的な発展の道とは何か、ちょっとナイーブな大学の卒論のテーマから、想いは今もそんなに変わっていません。20余年前世銀グループに転職してからは、理想と現実のギャップの大きさに戸惑ったり、世界中から集まった優秀な人達の中で自分の能力に限界を感じたり、紆余曲折でした。そんな泣き笑いの日々からIFC業務の両輪である投融資と技術・経営支援、そして大局的な見地から組織の方向性を決める戦略局での体験が、今仕事に生きてきていると感じています。昨年夏の組織替えの際にアイデアが受け入れられ、インクルーシブ・ビジネス・モデルという新チームを編成出来て、一巡りして原点に帰って来たなという思いが強いです。

Inclusive Business Models

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Inclusive Business Modelsって何?とよく訊かれます。最近は日本でもBOPビジネス (the Base of the Economic Pyramid、低所得層を対象とした事業)が話題に上るようになりました。BOP層の人口は地球人口の3分の2、約40億人です。採算を度外視した社会貢献でもない、営利だけを目的としたものでもない、第三の道を行く「BOP層に財・サービス・生活向上の機会を提供する営利的で規模のある事業モデル」、それがインクルーシブ・ビジネス・モデルです。そんな都合のいい話があるのかと言う気がしますが、途上国の現場では、BOPこそまさに我が企業戦略の根幹という例が増え始めているのが現実です。民営化後、地域の共同体とタイアップして確実に水の供給を貧困層に拡大していくマニラの水道事業(Manila Water)、インドで低コストの指紋照合端末を使って、文字の読めない貧困層に送金・預金・ローンを繋ぐ金融サービス業(FINO)、NGOと協調して環境に優しい認証付きコーヒーの作り方を中米の零細農家に指導し利益を共有する商業作物商社(Ecom Agroindustrial Corp)など、IFCが支援する案件だけでも200件を超え、それ以外も入れると、ここ数年の動きには目を見張るものがあります。これらはみなBOP層との関わりがビジネスの根幹にかかわっている企業だけに、強い底流を感じます。

こういった企業を支援し、そのビジネスモデルのノウハウを広め、途上国各地での更なる事業展開・拡大に繋ぎたい。それによって、民間セクターを通じて加速度が有り持続的な貧困削減・生活向上を目指したい。そのためには制度面での環境作りや、公的資金によって企業の背中を少し押してあげるといった支援も必要となってきます。どんな官民協力体制がいいのか?企業と市民活動との関わりはどんな形態にすべきか?投融資や技術・経営支援を動員したIFCの役割とは何か?遠くの目標を見つめながら、一歩一歩日々の問題と取り組んで行く、それが新チームの仕事です。問題は山積みですが、チームメンバーの熱意、そして何よりも途上国のお客さんの熱いハートに感化されて、毎日ワクワクしながら仕事をしています。

リーマン・ショック以降、欧米主導の従来の資本主義は暗礁に乗り上げています。奇しくもそれは新興国の台頭する時期と重なり、グローバルな社会問題の解決と利益追求を同時に目指す新たな資本主義への模索が始まっています。「ふつうの人の、ふつうの人による、ふつうの人のための経済・社会発展」とはどのようなもので、その中で民間セクターを担う企業の役割とは何か。戦後の貧しさから先進国へと成長した日本の経験と技術、そして日本人の心意気が貢献出来ることが沢山有るのではと思います。国際機関の一職員として、またオールジャパンの一員として、出来る限りお手伝いをさせて頂きたいと思っています。